眼鏡か、人間か。

眼鏡が本体って、冷静に考えたら意味が分からない。

「果つる底なき」池井戸作品の原点?手に汗握る銀行ミステリー。

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どうも、僕です。随分とお久しぶりになってしまいました。更新が遅れましたことをお詫び申し上げます。・・・何週ぶりの更新でしょうか。流石に気まぐれが過ぎました。でも記事書くのって本当に難しいんですよね。一度筆が乗るとあっという間なんですが。・・・今週からは、毎週投稿できると思います。たぶん。(たぶんじゃないんだよ)

というわけで今週は、好きな本を一冊紹介します。

 

さて、2020年9月末。TBS日曜劇場の大人気シリーズ、『半沢直樹』第2期の放送が終了し、多くの人が深刻な「半沢ロス」に見舞われました。むろん僕もまたその一人で、未だに最終話の録画を見返したりしています。さて、そんな社会現象を巻き起こした大ヒット作を創り上げた作家の名は、池井戸潤。『オレたちバブル入行組』に始まる『半沢直樹』シリーズ以外にも、『下町ロケット』『七つの会議』『ノーサイド・ゲーム』『空飛ぶタイヤ』等々、数多の名作を生み出しています。

 

今回紹介する『果つる底なき』は、1998年に刊行された同氏のデビュー作にあたる作品で、第44回江戸川乱歩賞を受賞しています。池井戸作品にしては異例の、本格派ミステリーです。

 

物語は、二都銀行の行員である「私」が、同僚の坂本から「これは貸しだからな」と謎の言葉をかけられるところから始まります。そしてその日のうちに、坂本は不可解な死を遂げてしまいます。やがて、坂本が不正な送金を行ったという疑惑が浮かび上がるのですが、「私」は坂本の無実を信じて手がかりを調べ続け、やがて襲いかかる組織の理不尽な論理やそれを押し付ける上司、姿の見えない敵への恐怖、度重なる周辺人物の死などを乗り越え、闇の奥に潜む真実を暴いていく――― という、正しく"銀行ミステリー"と呼ぶに相応しいものです。

 

というわけで、本作は先に述べた作品たちのようサクセスストーリーとは違いますが、その面白さはその後の池井戸作品の多くに通じています。

 

まず、描写の細かさ、リアルさ。特に銀行の内部は、池井戸氏が元メガバンクの行員であるからこその圧倒的ディテールで描かれます。これを読めば”銀行”というものがどういう組織であり、支店の融資担当の行員が普段何をやっているのか、支店の一日の業務はどのようなものなのか、臨店の様子はどのようなものなのか――― 等々を、だいたい理解できるといっても過言ではありません。また、彼の文章は、状況説明が非常に細かく書かれており、脳内で容易にイメージ映像を浮かび上がらせることができます。その巧みな表現力ゆえに、自然と文章一つ一つに脳がすっかり引き込まれてしまうのです。

 

それから、主人公のキャラクター。僕がこの作品を好きな理由はこれが一番大きいかもしれません。本作の主人公・伊木は、二都銀行渋谷支店で課長代理を務める普通の行員ですが、所謂「組織の論理・派閥の論理」を毛嫌いし、組織の利を優先することに抗う行動を貫き、結果本部から支店に飛ばされてきていました。立場よりも人としての生き方を優先するその姿勢は、半沢直樹にも通じますね。伊木はどこかシニカルなところもある男ですが、殴りかかってきた上司に怯まず抗戦し殴り返したり、何のために動いていると聞かれ「魂の救済」と真剣に答えるなど、根は真面目で熱いものを持つ、非常に魅力的な主人公です。『半沢直樹』シリーズを好きになった人ならハマること間違いナシです。

 

本作はミステリーであるという点で、『半沢直樹』シリーズや『下町ロケット』のように、「弱きが強きに抗い、成り上がる」という池井戸作品のイメージとは少々異なりますが、組織に巻かれることなく真実を暴かんとする伊木の姿勢は、ある意味それらの原点であると言えるかもしれません。全体的にハラハラドキドキする内容で、派手なシーンも登場するため、読み応えは抜群です。ぜひお手に取ってお読み頂きたいです!

 

それでは、今回はこのへんで!

 

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