眼鏡か、人間か。

眼鏡が本体って、冷静に考えたら意味が分からない。

元吹部が感じた、「響け!ユーフォニアム」のリアリティ。

 

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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

響け!ユーフォニアム」はいいぞ。

僕は4月頃にこのアニメを視聴してから、今に至るまでずっと、各所でこの言葉を口にしています。というか、人と話していてアニメについての話題になった際、そう口にせざるを得ない。それぐらい、「響け!ユーフォニアム」という作品には、観た人を掴んで離さない魅力があると僕は思います。

 

さて、このアニメは吹奏楽部を題材とした、立派な「吹奏楽部アニメ」なのですが、実際には吹奏楽部ってどんな部活なのか、知らない方もいるでしょうし、このアニメを視聴して、「実際の吹奏楽部もこんな感じなの?」という疑問を抱いた方もいらっしゃるでしょう。まあ、端的にその疑問にお答えしますと、

だいたいこんな感じです。

もちろん、ストーリーは脚色されたものですし、実話に基づく話ではない(モデルになった学校は存在しますが)ですが、というか現実はあんな可愛い子ばっかりじゃないですが、リアリティという面では、本作のような物語自体は、割とどこの吹奏楽部でもあるものだと感じます。
今回は、実は中学高校ともに吹奏楽部に所属していた僕が、「元吹部として」、本作品のリアリティをいくつかの視点から解説しつつ、このアニメの魅力を語っていきたいと思います。

 

なお本記事はあくまで「オタクが良さをひたすら語る」という趣旨なので、詳細なストーリー、キャラクターの紹介などは公式サイト 等に委ねます。気になった方はそちらへ。(詳しく書いてたらめんどいもん)

 

  

①顧問強すぎでは?

まず、主人公の入学時点では明らかに下手だった部が、敏腕指導者を迎え、一気にレベルを上げ、全国に進出するまでになるという展開。これは確かにドラマチックですが、吹奏楽部では普通にあります。というのも、吹奏楽部は指導者の力が非常に如実に現れる部活であり、指導者が変わっただけで結果がまるで変わってしまうことがあるのが、一つの特徴でもあるのです。実例だと、日本最強吹奏楽部の一つであった某女子高の顧問が、それまで有名ではなかったとある女子高に移ったところ、その年から一気に大会で頭角を現し始めた―というのが記憶に新しいですね。
しかし、それを分かっていても、皆の士気がどんどん高まり、部の空気が一つになっていき、その過程で衝突等を経験しつつも、実力を着実に上げていく。という王道な青春展開は、やはり観ていて熱くなるものです。そして、「ああ、もうこんな青春時代は戻ってこないんだな・・・」という感情になります。こう感じさせる作品は、青春ものとしては間違いナシでしょう。

 

②コンクールってそんな重要なの?

それから、コンクール出場を賭けた熱い努力の数々。「実際コンクールってそんなに出たいものなの?」という疑問を抱いた方もいるかもしれません。その疑問にお答えしますと、
めちゃくちゃ出たいものです。
やはり、吹奏楽部にとって一番の晴れ舞台であり、そして上に行けるチャンスのある年に一度の行事(マーチングの大会に参加してる学校等ではこの限りではない)ですから、当然皆気合が入りまくります。しかしながら、コンクールには限られた人数しか出場できませんから、北宇治高校のようにメンバーの選抜が行われることはよくあります。僕の高校も人数の多い部だったので、結構熾烈なメンバー争いが繰り広げられていました。久美子や麗奈のように、一年で先輩を差し置いてメンバーに選抜される、というのもよくある光景です。高校のバンドはやはり、出身中学や経験者か否かなどが様々で、実力が学年に完全に比例しませんからね。麗奈のような天才みたいな一年も、実際学年に一人ぐらいはいます。でも、経験者でもそうでなくとも、負けたくない一心でひたむきに努力する姿はただただカッコいいです。1期のオーディションの回でそんな姿を見せる中川夏紀、めちゃくちゃ大好きです。(突然の告白)

 

③ちょっとギスギスしすぎでは?

そして、このアニメの大きな特徴の一つに、部員同士のギスギスした関係性が多く描かれるところがあります。1期では麗奈と優子、2期では希美とみぞれ、そして劇場版では奏と夏紀や久美子、といった具合で、シリーズに渡ってすれ違いのストーリーが描かれます。また特定の部員同士のそうした空気以外にも、滝が来る前の北宇治吹奏楽部の空気、滝への疑惑が向けられ始めるところ、など、部活全体の空気がギスギスすることもあります。そのようなマイナス面もしっかり描写されているのが本作品の素晴らしさですが、実際そこまでギスギスなる?という疑問を抱いた方もいらっしゃると思います。その疑問にお答えしますと、
普通になります。
それどころか現実のギスギス具合は、このアニメを余裕で越えてきますよ。結構マジで。自分が聞いたことある話では、陰口は日常茶飯事、パート練習等で半ば除外のような扱いをする、男子が女子に何も言えない(経験者は語る)、などがあります。何だかんだ、女子というのはギスギスしがちな生き物です。男子からしたら普通に怖いです。まあ、そうした関係を傍から眺めてるのは面白くもありますが、自分もそれに巻き込まれたりしますからね。(経験ry)
というか本作品では、先に述べたすれ違ってた部員たちは、ちゃんと言葉なり音なりをぶつけあって最終的にいい関係になってるので、現実よりずっと良いんですよね。僕が見たことあるのはだいたい、お互い陰口を叩きあったまま卒部、ってパターンだったので、余計にそう感じました。

 

しかしながら、そんなマイナス要素を差し引いても、吹奏楽部という部活には、大きな魅力があります。なんといっても、全員の音が一つになり、一つの音楽、作品になる時の快感は、なかなかに得難いものです。「ああ、自分はこの瞬間の為に吹奏楽をやってきたんだ」と感じられる瞬間は、本当に最高です。

そして、そんな吹奏楽部をここまで丁寧に、力を入れて描いたこのアニメもまた、本当に魅力たっぷりの素晴らしい作品です。日本には現在120万人以上の吹奏楽人口がおり、日本人の20〜30人に一人が吹奏楽経験者だと言われています。ご覧の方にも吹奏楽経験者がいらっしゃるかもしれませんね。そのような方々にこそ、是非観ていただきたいアニメです。

 

まだまだ書きたいことは山ほどあるのですが、ひとまずこのあたりにしようと思います!お読み頂きありがとうございました。

 

P.S. ちなみに僕の担当楽器はホルンでした。本作品ではあまりクローズアップされませんでしたが、三日月の舞ではめちゃくちゃカッコいい(超きつい)ので良かったです。